── 歩くこと、出会うこと、残すこと

旅をしていると、目の前に広がる風景は一瞬ごとに表情を変えていきます。朝靄に包まれた町並み、夕陽に染まる路地、ふとした会話で立ち止まった小さな商店街。
そのどれもが、旅人の視点でなければ見過ごしてしまうような小さな瞬間です。
私にとって写真は、その「旅の物語」を自分の記憶だけでなく、誰かと分かち合うための言葉のようなもの。文章で綴るのが日記なら、写真は心が震えた刹那の翻訳です。
まだ見ぬ街へ向かうとき、私はいつも「どんな光に出会えるだろう」と期待します。
一方で、かつて訪れたことのある場所に再び足を運ぶと、以前の記憶と今の風景が重なり、時間の流れを実感します。
「あの日と同じ路地に立っている自分」と「新しい光を浴びる街」が一枚のフレームに収まるとき、それは旅がくれる最高の贈り物です。
旅の物語は特別な絶景だけではなく、日常の延長にこそ宿っている。
道端の影、擦れ違う人々の声、遠くで響く祭囃子。
そうした細やかな「旅の音」を、私は写真に閉じ込めたいと思っています。
だから私は撮り続ける。
過ぎ去ってしまう景色を、旅という物語の一章として残すために。




